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"夏イルミ"について考えてみる

夏の夜の集客にイルミネーションをご利用頂くという案件もちらほらと頂くことがあります。都内では天井一面にブルーのストリングスを這わせた東京タワーの「天の川イルミネーション」が有名ですよね。寒色系の爽やかな色のストリングスライトを装飾して、夏の夜に涼しさを感じて頂くというコンセプトが多いように感じます。


「夏イルミをしたいので樹木にブルーのストリングスを巻きたい」


このようなリクエストを頂くたびに個人的には少し悩んでしまうのですが、ブルーのイルミネーションを使えば夏の演出としてふさわしいのかどうなのか。。というのも、ブルーのイルミネーションはシャンパンゴールドと並び冬のイルミネーションにおいても人気カラーです。「涼やかなブルーのイルミネーション」「雪の世界のようなブルーのイルミネーション」言い方を変えればどちらも通用してしまいますが、その実、内容は同じ、、ということにちょっと罪悪感に似た違和感を感じてしまうわけです。


ちなみに、東京タワーの夏イルミもブルーのストリングスを使っていますが、窓にキラキラが映ることでまるで空に星が浮かんでいるような、という表現をするために"部材として"イルミネーションを使っていて、立地や季節ならではの素晴らしい企画だなと思います。

そのブルーだけをとって、夏イルミと言う、ということへの違和感についてのお話です。


夏イルミに対する違和感


ここで一旦、何に違和感を感じているのかを解剖してみます。

装飾としてのイルミネーション自体にはクリスマスツリーや門松、ジャックオーランタンのような季節を限定した(シーズンが終わった後に置いてあると少し不愉快に感じるような)性格はありません。店舗やホテルの軒先などオールシーズンを通した装飾としてご利用いただいているケースもよく見かけますし、それに対して違和感を感じることはあまりないかと思います。

ただし、コンテンツとしてのイルミネーションになった場合多少話は変わってくると思っていて

・キラキラ感

・密度感

を満たし、いわゆるイルミっぽくするとどうしても"冬の風物詩"としての印象が非常に強くなります。「イルミ」という言葉を使うと尚更です。

この場合「季節外れの」というエモさは一理あるとしても、一方、夏に(いわゆる)イルミネーションが見たいか!という問いに「イエス!」と元気よく答えるには少し腰がひけてしまうのではないかと言うのが私の違和感の正体です。


実はこの違和感が私だけのものでないように思う根拠もあって、イルミネーションをたとえば10月から2月まで開催していたとしても12月以外の集客力が基本的に低いということにあります。つまり、いわゆる"イルミネーション"はどうしてもクリスマスとの結びつきが強く、12月以外の月、そして夏との親和性を作るのが難しいコンテンツなのではないかと考えています。

他季節にあって別に不愉快なものではないが、お客様が積極的に行きたいかと言われると「?」。充分な集客力が発揮できるのか、というところに不安を感じているわけです。


夏にぴったりなイルミネーションを作るには?


じゃあ夏にイルミネーションをやるな!と言いたいのかというとそうではなくて、違和感のない形で開催することももちろんできると思っています。

その鍵となるのが季節感のあるテーマの設定です


寒色のストリングスライトを使っていても輝度が高くても、天の川を表現しているのならさほど違和感はなくて、単純に木に青いイルミを巻く=夏!には違和感を感じる。これは単純にテーマ=イルミ!の強引さに対する違和感で、冬であれば風物詩という大義によってテーマ=イルミ≒冬!で辛くも押し切れるところを、夏に持ってくるといよいよ無理があるよねということだと思います。


夏に限定した話で言えば、イルミネーションを形作る主要部材であるストリングスライトを使用すると輝度の高い寒色でシックな雰囲気はどうしても欧米的な雰囲気を醸成しますが、日本人にとっての夏の夜といえば花火や夏祭りで、欧米よりもアジア、エスニックな雰囲気の方がしっくりくる、ということも要因の一つかもしれません。

例えば、開催テーマを"アジアンナイト"に設定し、

・間接光(ランタン、和傘、灯籠など)をベースにし、直接光を減らす

・暖色、カラフル

をデザイン指針として展開すると、夏の熱気を帯びた魅力的な夜間空間になると思いませんか。

冬の商材を効果的に使うなら「星の世界」をテーマに設定し、星や星座に特化した光のエンタメ空間を七夕の時期に公開するのも素敵です。

下の写真は大昔に前職で担当させて頂いた夏イルミの様子です。ポップな日本の夏をテーマに、本物の竹シートを使ったRGBの竹オブジェとRGB提灯で演出しました。

大切なのは、夏ならではのテーマを設定しそれに適した部材を用いて演出を行う、ということだと思います。


まとめ


余暇に外出する強い動機は「ならでは感」の享受であることが多いと思います。

その土地ならではの料理、その季節ならではのアクティビティなど。


イルミネーションではそうした明確なテーマを設定して装飾するということが非常に少ないのが現状ですが、

・適切なテーマを設定すること

・テーマに沿った装飾や演出を行うこと

・ストリングスライトの使用を前提とする呪いから脱すること

ができれば夜間のエンタメ照明空間として、時期や場所性の「ならでは」を演出し、より魅力的で季節を問わないナイトエンタメコンテンツに進化するはずだと考えております。

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